ハートケア情報委員会
狭心症・心筋梗塞患者さんの体験談
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第3話 狭心症の克服がもたらした価値観の転換〜治療後はストレスからもフリーに〜 東京都在住 武田 雄介さん
60歳 (仮名)
 今思えば、5年ほど前から心臓病の兆候がありました。血圧が140〜150くらいと高めで医師からは気をつけるようにといわれていました。何となく胸がもやもやする感じがあり、長期の休暇をとった際に、携帯型の心電計を一日中つけて過すホルター心電図やエコー検査もやりましたが、異常は見つかりませんでした。2年後、今度は違和感ばかりでなく、不快感を覚えるようになりました。ある日、不調のため会社を早退し寝ていても、一向に治まりません。近隣の病院に電話したところ「すぐに来て下さい」とのことで、エコーやレントゲン検査をしましたが、やはり「狭心症の疑いなし」といわれました。この頃は、階段を上ると息苦しかったり、早歩きするとぜいぜいしたりしていましたが、胸が痛くなることはなく、年齢のせいかとあまり気にとめないようにしていました。

 ようやく治療に至るきっかけになったのは去年の人間ドックです。肺のCTをとったところ、呼吸器専門の先生から「動脈硬化が進んで、心臓の冠動脈が石灰化しているようです。専門医に診てもらって下さい」といわれました。数ヵ月後、循環器専門の病院で3次元のCTをとっていただいたところ、「石灰化が相当進んでおり、血管が通っているかどうかも分かりません。カテーテル検査が必要です」といわれました。検査の結果は「血管が完全に詰まっている」というものでした。通常であれば命を落としていてもおかしくありませんが、徐々に詰まっていったため、その流れを助けるように、細い血管が心臓を取り囲むように新たに発生して、辛うじて血流が保たれていたのです。なるほど、だから胸が痛むことがなく、息苦しさや違和感が続いていたのか、と納得しました。

 血管がかなり硬く詰まっていたため、治療は4時間にも及びました。ようやくカテーテルが通った瞬間、看護婦さんが「通りましたよ」と耳打ちしてくださったときは、歓びと助かった!という解放感でいっぱいでした。詰まったところをバルーンで広げた後に、ステントを3本入れて治療を終えました。画像を見ると、治療前には消えていた心臓の血管が、見事に太くよみがえっていたのです。
数ヵ月後に治療予定であった血管の先端部分も、根元の血流が良くなったため、十分に血液が通うようになり、治療の必要もなくなりました。

  治療後は、それまでの息苦しさは全くなくなりました。「心臓に何か異常があるのかもしれない」という爆弾を抱えているような不安もなくなり、精神的にもとても楽になりました。また、もともとせっかちなのですが、気づくと健康だったときのように歩く速さも回復していました。今では、早足で1時間以上のウォーキングを週に3回続けています。

 技術戦略という仕事柄、それまでは仕事を持ち帰ったり、社内の調整に悩んだりと、ストレスをためやすい傾向にありました。きっと血管をキュッと縮めながら毎日過していたのでしょうね。血管が詰まるなんて本当は死んでもおかしくない。せっかく助かった命です。その後は吹っ切れて、明るく楽しく毎日を送るようになりました。不思議なことに仕事は持ち帰らなくてもうまく回るものなのですね。「今までは何だったの?」という感じです(笑)。狭心症は、私にとって、仕事・日常生活の過し方すべてにおいて今までの価値観を変えてしまう大きな経験でした。

 私の場合、症状が出始めて、診断・治療がなされるまでに実に5年を要しました。心臓病の検査にはいろいろな段階があるようですが、結果が腑に落ちなければ、進んでCTやカテーテルなど、高度な精密検査を受けるべきです。また、人間ドックや健康診断でコレステロール値・動脈硬化指数が高い、などの指摘をうけたら真剣に受け止めて、生活習慣を見直すべきです。これらは、単なる数字ではなく、自分の体の状態を示しているものです。まさにこれらの数値に異常が出始めたのと、狭心症の初期症状が出はじめたのはぴったりと一致していました。生きているからこそ、楽しくも過せる。狭心症の経験が貴重だと思えるのも、今日の私の命あってのことなのです。
主治医からのコメント 主治医からのコメント
高血圧・高脂血症・肥満・喫煙など、動脈硬化の危険因子は、その数が多くなればなるほどリスクが高まります。狭心症や心筋梗塞は動脈硬化が進行して病変が複雑になるほど治療も困難になります。ただし、武田さんのように治療後も積極的に食生活や運動などの生活習慣を変えることで、狭心症や心筋梗塞になった方でも動脈硬化の進行を抑えることができ、再発のリスクも低くなります。少しでも異常を感じたら、早めに受診しましょう。
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