インフルエンザと心臓病の関係
2009年08月26日
●新型インフルエンザとは
メキシコでの感染拡大に端を発し、5月の連休よりニュースをにぎわせている新型インフルエンザ。一時期落ち着きを見せていたものの、ふたたび感染の広がりが見受けられ、空気の乾燥する秋に大流行するのではないかと、予断を許さない状態です。
新型インフルエンザとは、新たに人から人に伝染する能力を持つようになったウイルスを病原体とするインフルエンザです。今回の米国やメキシコで最初に確認された新型インフルエンザは、その遺伝子が豚インフルエンザのものに似ていることから、当初は豚インフルエンザ、と呼ばれましたが、その後の研究で、豚インフルエンザの遺伝子のほか、鳥インフルエンザウイルスやヒトインフルエンザウイルスの遺伝子をもつことが確認されています。なお、豚インフルエンザはこれまでにも、豚にインフルエンザの大流行を引き起こしてきましたが、持続的な人への感染が確認されたのは、今回が初めてです。
●新型インフルエンザの特徴
通常の季節性のインフルエンザの場合、死亡などの重篤なケースに至るのは、高齢者が多いとされていますが、今回の新型インフルエンザについては、糖尿病やぜんそくなどの基礎疾患のある人を中心に重篤化が見受けられるとのことです。メキシコの発表によると、新型インフルエンザによる死亡者58名のうち、肥満や糖尿病は27.6%、循環器系の疾患を抱えていた人は12.1%と、感染症や呼吸器系疾患を患っていた人3.4%を大きく上回っています(2009年5月12日現在)。肥満・糖尿病ともに狭心症・心筋梗塞の危険因子であることを考えると、これら心臓病のリスクが高い患者さんは、新型インフルエンザに十分な注意が必要であると考えられます。
●インフルエンザが引き起こす心臓病の重篤化とは?
2007年European Heart Journalに掲載された研究結果では、インフルエンザの流行は心疾患による死亡率の上昇と関係があり、また、インフルエンザは心筋梗塞を引き起こす可能性が高いということが示唆されています。インフルエンザの流行時と非流行時とで比較すると、急性心筋梗塞による死亡率は、流行時に約1.3倍上昇し、狭心症など慢性の虚血性心疾患における死亡率も1.1倍上昇したとのことです。これは、1993~2000年の8年間に、ロシアのサンクトペテルブルクで検死解剖より確認された、11,892名の急性心筋梗塞患者と23,000名の慢性の虚血性心疾患患者を調査した研究により明らかになったものです。
それまでにも、インフルエンザやその他の上部呼吸系感染は、急性で重篤な炎症反応を体内にひきおこすことで、動脈硬化性プラークの不安定化や破裂をひきおこし、心血管事故の引き金になるといわれてきました。
これから、さらにメカニズムの解明は進んでいくものと思われますが、この研究からも実態として、インフルエンザが心臓病を重症化させることは確かなようです。
●その他の心臓病とインフルエンザ
ウイルス性の心臓病といえば、心筋炎がもっとも起こりやすい心臓病です。このウイルスの中には、インフルエンザウイルスも含まれます。心筋炎は、心不全や不整脈など重篤な心臓病を引き起こします。この他にもウイルスには、研究段階のものも含めて、心臓病と大きくかかわっているものも多いのです。
●心臓病の人のインフルエンザ対策
先ほど紹介したサンクトペテルブルクの研究でもインフルエンザワクチンと、コレステロールを下げる薬を使用することで、心臓病の患者さんがインフルエンザにかかることによる死亡を予防することができるとしています。
心臓病の患者さんの中には、インフルエンザワクチンを接種することによって合併症がおこることを心配されている方も多くいらっしゃいますが、インフルエンザにかかることによって心臓病が重症化するというリスクがあることも忘れてはいけません。
新型インフルエンザであっても季節性のインフルエンザであっても、心臓病を持っている人は、必ず主治医に相談してワクチンを接種するなど、十分に備えましょう。
■参考資料:
・厚生労働省 新型インフルエンザ関連対策情報
http://www-bm.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/
・Influenza epidemics and acute respiratory disease activity are associated with a surge in autopsy-confirmed coronary heart disease death: results from 8 years of autopsies in 34892 subjects
Mohammad Madjid, Samuel Ward Casscells III et al.
European Heart Journal (2007) 28, 1205-1210