ドクターズコラム

ハートケア情報委員会のドクターが狭心症・心筋梗塞の治療法など、狭心症・心筋梗塞に関するさまざまな情報をお伝えします。

第12回 医療の進歩と理想的な地域システム

埼玉県川越市 平成クリニック理事長 高山 泰雄

●この分野における医療の進歩と、現在の状況についてどのようにお感じですか。

埼玉県川越市 平成クリニック理事長 高山 泰雄 冠動脈インターベンション(PCI)が始まった頃と現在では、まったく比較にならないほど発展しています。当初のバルーンから、ステントを使ったPCI、そして現在では薬剤溶出ステントへと技術や道具が、急速に進化しています。この治療方法が始まったばかりの頃は「カテーテルというのは危ない」というイメージを持っている一般の方も多く、「何月何日にやります」と決めても、大体10人のうち9人くらいは「やっぱりやめます」と断ってこられました。しかし現在では、ほとんどの病院で、狭心症・心筋梗塞の治療の第一選択として、PCIが行われています。低侵襲で患者さんの負担が少なく、入院も2日~3日で済みますから、急速に市民権を得ることになりました。今後、もし、病院ごとの治療成績などが公開されれば、開業医としてはさらに安心して患者さんを病院に紹介することができるようになりますね。
 学会では、最新の治療技術の発表や、治療方法に関する積極的な議論が展開されていますが、開業医の中には、日常の診療に追われ、なかなか学会に出席できない医師も多くいます。一人一人の勤務医と開業医、それに学会などが知恵を出し合って、お互いに情報を共有していけば、それぞれの実態に対する理解がより深まり、患者さんに対して、より質の高い医療を提供できるようになるでしょう。最近の若い医師の中には、このような活動に熱心な人も多いですから、今後が楽しみですね。


●診察を受けるにあたって、患者さんに何かアドバイスはありますか。
 
 第6回のコラムでお話いたしましたが、受診の際には、不安に感じていることや症状を、ありのままに医師に伝えましょう。医師は、患者さんからの訴えを聞いて診断しますので、私たち医師の方から、患者さんに症状の説明を誘導したり強制したりすることはありません。また、テレビの番組で「胸が痛いと心筋梗塞だ」と聞いてしまうと、「胸が痛いので自分は心筋梗塞に違いない」と思い込み、是が非でも「薬を処方して欲しい」と訴える方もいらっしゃいます。胸が痛むからといって、必ずしも狭心症や心筋梗塞とは限りません。自分の病気を決め付けず、「正直に、ありのままに」医師に伝えるというのが、早期発見・早期治療の重要な要素なのです。


●アメリカと日本とで、開業医の役割に違いはあるのでしょうか?

 アメリカには、看板に掲げている専門分野を大学病院などで臨床を通して学び、また、常に最新の医療技術を十分に理解している開業医がいます。私がアメリカの病院で勤務していた頃、毎週水曜日に必ずその病院に来る開業医の先生がいました。インターンとして勉強にきている学生や研修にきているレジデントを教育しに来るのです。そして、指導しながら、自分の患者さんに対する治療のプランを一緒に立てていくのです。各科の治療方針を決めるカンファレンスでも、リーダーシップを取ります。アメリカでは、そのような開業医が、病診関係に必要とされるのです。このような開業医は、常に基幹病院と密接にコミュニケーションを取っており、患者さんにとっては、大学病院の外来へ行くのと、その開業医の先生のところで受診するのとで、ほとんど差がないのです。開業医たちが、「別の診療科との横のつながりも、基幹病院との縦のつながりもあるコミュニティー」をつくっているのです。
 一方で、2004年からスタートした日本の研修医制度は、非常に良いシステムだと思います。2年以上の時間をかけて色々な診療科を経験し、一通りの疾病に対する知識を培った後に、専門医になって仕事をする。研修医制度は、若い医師に幅広い知識と専門性の両方を備える機会を提供するという点で、患者さんにとっても、治療の遅れや見落としが少なくなることが期待できるものですね。


●循環器のみならず、他の診療科の開業医同士が連携していくことが、地域医療を支える仕組みとして求められるのではないでしょうか。
 
 消化器、呼吸器、循環器など別の診療科同士の専門医が、開業医のネットワークをつくっていくことはとても重要です。そしてその「診診連携」の中で患者さんを診ていきながら、なおかつ、自分の専門とする診療科のある地域の基幹病院と連帯を保ち、常にコンタクトを持ちながら、必要に応じて患者さんをお願いする「病診連携」も行うという、二重の体制が必要です。あらゆる方面でネットワークを持ち、互いに協力し合いながら診療していくことが、患者さんにとって使いやすい地域医療のシステムとなるのだと思いますよ。


■関連リンク:
第6回 問診の重要性|ドクターズコラム|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/column/article/6.php
第23回 日本の医療環境について|ドクターズコラム|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/column/article/post_16.php
第41回 医師との関係づくりは?|ドクターズコラム|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/column/article/post_34.php


埼玉県川越市 平成クリニック理事長 高山泰雄
【プロフィール】
群馬大学医学部卒業。
群馬大学医学部付属病院第二内科、同大学院医学研究科、東京
女子医大心臓血圧研究所内科、立正佼成会付属佼成病院麻酔科、
榊原記念病院内科、米・スタンフォード大学病院循環器内科留学を
経て、1989年、医療法人社団平成クリニックを開設。
循環器疾患を専門に地域医療に従事。

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