ドクターズコラム

ハートケア情報委員会のドクターが狭心症・心筋梗塞の治療法など、狭心症・心筋梗塞に関するさまざまな情報をお伝えします。

第46回 患者さんへの生活指導は?

財団法人心臓血管研究所所長 相澤忠範

●心筋梗塞などで緊急入院し、無事に治療が終わった後、症状が軽快したためか、なかなか生活習慣の改善の必要性を感じられない患者さんがいらっしゃいます。効果的な指導方法がありましたら、教えてください。(医療従事者 20代 女性)

財団法人心臓血管研究所所長 相澤忠範 これは全くその通りで、医療に従事している人たちにとっては切実な問題ですね。一度、病気になった患者さんが二度とならないように生活習慣を改めるかどうかというのは、その人が病気を理解する気があるかどうかというのにかかっています。一生懸命、何度説明しても、理解してもらえないということがしばしばあります。残念ながら、まだ認知症が疑われるとも思えない、50~60代くらいの方でも、どんなに説明しても分かっていただけないことがあります。ご理解いただけるかどうかは、かなりご本人の性格に左右されるケースが多いといえますね。

 ご本人に病気をしっかりと認識していただく方法として、特効薬のような言葉やコツはありません。ただ、地道にご本人に何度もお伝えしていくしかないのが現実です。つまり、「あなたに起こった狭心症という病気は、発生した場所を治したことによって症状が消えているだけで、病気そのものは消えていないのですよ。これまで通りの生活だと、数年後にまたなります」、「心筋梗塞で一命を取り留めたのは本当に運がいいことです。このままの生活を続けると、また起こります」ということを徹底的に説明するのです。

 その中でも比較的、聞いていただけるのは、栄養士さんにかなりがっちりとした栄養指導をしてもらうことです。栄養指導は、基本的にご夫婦などご家族で聞いて頂きます。患者さんと一対一ではなく、ご家族など周りの人にも認識してもらうことで、食生活への注意やサポートが得られ効果が高まります。単身の方でも、ご自分でできる範囲でやることを覚えていただくために、食塩の量や脂質とはどのようなものか、などについて栄養士さんに具体的に指導してもらいます。たとえば、外食しても手をつけていいもの、避けるべきものを教えてもらうのです。

 また、栄養指導を通して、これまで実際にどのような食事をしていたのか、医師や栄養士だけでなく、ご本人も明確に分かります。栄養士さんの質問に答えることで、自らの食生活が書き出され、客観的に見直すことができるのです。

 そのほかに、心筋梗塞になった人は心臓リハビリテーションをやってもらうと少し意識が上がってきます。自転車エルゴメーターを漕いでもらうなど運動負荷をかけた後に、脈拍や血圧の概念を学んでもらい、定期的な運動をすすめると少しずつやる気がでてくるようです。つまり運動療法の有効性を体験し、実感してもらうことで、これまで自分の生活に組み込まれていなかった運動習慣を受け入れやすくなるのです。なお、心筋梗塞や狭心症の治療開始日から150日は、心臓リハビリテーションに健康保険が適用されます。

 最近は、バルーンやステントなど医療機器の進歩によって、冠動脈インターベンションも短時間で終わるようになりました。場合によっては、30分もかからないこともあります。あまりにあっさりと終わるため、風邪よりも早く回復したように感じる人もいますが、心臓病が治ったわけではありません。あくまでその部位の治療が終わっただけです。治療後の生活習慣が悪ければ当然再発しますし、実際に2回目になるときには、前よりもひどい状況になります。正直に申し上げれば、一度、狭心症や心筋梗塞になった人は、日常生活にかなり気をつかっていても、既往歴のない人に比べ、再発の確率はかなり高くなります。ですから、病気と上手につきあっていくためにも、どうやって防ぐかというのを真剣に考え、実行しなければならないのです。

「いまは症状が消えているけれども、原因を根本的に治したわけではなく、このままの生活を続けると再び病気が襲いかかってきます。運が悪いと命を落としますよ」、「治ったというのは大きな誤解で、とりあえず発作のもとを断って手当てしただけで、また出てきますよ。それを避けるには、○○さんの場合・・・」ということを、嫌われるほどしつこく繰り返して言うしかありません。本当にそれ以上の名案はありません。禁煙と同じですね。主治医や医療スタッフ全員で、「とりあえず手当てしただけで治ったんじゃないですよ」、ということをお互いがしつこいと感じるくらい言い続ける以外、方法はないのです。くじけそうになることもあるかもしれませんが、お互いにがんばっていきましょう!


■関連リンク:
第20回 治療後の暮らしについて|ドクターズコラム|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/column/article/post_13.php
第37回 心臓病は完治するのですか?|ドクターズコラム|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/column/article/post_30.php
第39回 治療後の生活で気をつけるべきことは?|ドクターズコラム|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/column/article/post_32.php

財団法人心臓血管研究所所長 相澤忠範
【プロフィール】
福島県立医科大学卒業。東京医科歯科大学医学部付属病院、平塚市民病院循環器内科を経て、1979年から(財)心臓血管研究所付属病院勤務。2005年より、同研究所所長。
大学卒業以後40年間、心臓カテーテル検査および治療に従事。虚血性心疾患における心臓カテーテル治療、冠動脈インターベンションに造詣が深い。

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