ドクターズコラム

ハートケア情報委員会のドクターが狭心症・心筋梗塞の治療法など、狭心症・心筋梗塞に関するさまざまな情報をお伝えします。

第40回 家族が心臓病の場合は、自分も危ないですか?

財団法人心臓血管研究所所長 相澤忠範

●母親が心筋梗塞で亡くなりました。私も体格や体質がよく似ているので、気になっています。(80代女性)
●祖母は心筋梗塞で亡くなりました。母はバイパス手術とステント治療を受けています。同じ体型の自分が大丈夫か不安です。心臓病は遺伝するものなのでしょうか?(女性)


財団法人心臓血管研究所所長 相澤忠範 血のつながりによる体質的な傾向というのは当然あるでしょう。冠動脈疾患を診察するときにも、はじめにリスクファクター(危険因子)というのを問診形式で伺いますが、その項目には、高血圧・糖尿病などに並んで、家族歴というのがあり、非常に重要な項目の一つです。というのも、体質の傾向というのはご指摘の通り、遺伝するからです。

 ただし、いわゆる遺伝子学的な遺伝の他に、実はもう一つ大切な背景があります。それは、親子という近親関係によって生活環境も非常に似たものになるということです。この生活環境の類似性によって、外的要因が加わり、遺伝子学的なものと同じような影響を体に与えます。

 最近では後天的な糖尿病である2型糖尿病が子供で発症するということも聞くようになりましたが、これは明らかに食生活をはじめとする生活習慣が主な原因です。スナック菓子を食事代わりに食べ、ジュースを水代わりに飲み、外に遊びに行くこともなくゲームとにらめっこ、塾などで帰りが遅くなり夜食を食べる…、など、体づくりに大切な成長期に摂るべき栄養のバランスが悪く、必要な運動が疎か(おろそか)になると、本来、大人がかかるような病気に子供がなることもあります。糖尿病は、狭心症や心筋梗塞の危険因子ですから、まだ大人にならないうちにその因子を一つ背負うということになるのです。一概にはいえませんが、子供が2型糖尿病になっている場合、その親御さんも生活習慣病にかかっているケースが少なくありません。

 たとえば色覚異常(色盲)のように遺伝の中には、染色体の影響で遺伝し、子孫に発症するというものもあります。この場合は、先天的なものであり、個人の努力で防げるものではありません。しかし、狭心症や心筋梗塞の遺伝というのは、多くの場合、そのように遺伝子が影響する回避できない遺伝とは違って、個人の努力により、予防が可能なタイプの遺伝です。とはいえ、傾向としてなりやすいということはありますので、かなりの注意が必要でしょう。また、予防に気をつければ狭心症や心筋梗塞にならないかというと、遺伝子学的な遺伝もありますので、必ずしも大丈夫だとは言えません。しかし、なにもしないよりもかなりの確率で予防することができますし、万が一なったとしても、重症化を防ぐことができます。

 ご相談の内容によると、体格や体質が似ているということですが、そうなると確かに狭心症や心筋梗塞になる危険性は高いといえます。体格が似ているということは、遺伝子的な遺伝に加え、食生活を含めた生活習慣、あるいは性格の気質も似ている可能性があり、こうなるとリスクは上がります。

 予防をきちんとするということであれば、体質というのが具体的にどのようなものか、検診できちんとリスク評価をすることが重要です。たとえば、肥満があるとか、血圧が高いとか、糖尿病の傾向があるなど、検診という形で数値化して評価してもらい、指導を受けることが重要なのです。まだ病気になる前の一次予防ですから、食事で注意すべき点、長さや就寝時間も含めた睡眠のとりかた、運動の量や方法など、適切な指示を受けるのが大切です。

 狭心症や心筋梗塞の遺伝子的な遺伝は、あくまでなりやすい傾向というものです。ある種の病気のように遺伝子で決まっていて、必ず発症するものではありません。自分でコントロールできる外的要因がありますので、遺伝というのはあくまでかかりやすいという理解で良いでしょう。ですから、楽観も悲観もせずに、積極的に予防に取り組んで下さい。


■関連リンク:
第4回 最近の傾向とリスクファクター|ドクターズコラム|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/column/article/4.php
第7回 予防で一番大切な要素は食事、そして運動。|ドクターズコラム|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/column/article/post.php
狭心症・心筋梗塞患者さんの体験談(第4話 食事・運動・ストレスの改善)|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/taiken/eps04.html

財団法人心臓血管研究所所長 相澤忠範
【プロフィール】
福島県立医科大学卒業。東京医科歯科大学医学部付属病院、平塚市民病院循環器内科を経て、1979年から(財)心臓血管研究所付属病院勤務。2005年より、同研究所所長。
大学卒業以後40年間、心臓カテーテル検査および治療に従事。虚血性心疾患における心臓カテーテル治療、冠動脈インターベンションに造詣が深い。

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