第39回 治療後の生活で気をつけるべきことは?
埼玉県川越市 平成クリニック理事長 高山 泰雄
●先日、家族がカテーテル治療を行い、ステントを入れました。再発防止のために、退院後の生活で気をつけるべきことを教えてください。また、これ以上、心臓病の家族が増えないためにも、予防方法と早期発見の方法を教えてください。(女性)
再発防止に気をつけるというのはとても重要なことですね。まず、抑えておかなければならないのは、狭心症や心筋梗塞になるということは、その前の段階で、ある程度血管が病気になっていたということです。その病気になっていた血管の中に症状を起こすような病変が存在し、結果として、狭心症や心筋梗塞という心臓病として現れたまでなのです。逆にいうと、治療した箇所以外の血管は依然として症状を起こす危険性が消えておらず、再び心臓病を引き起こさないといえなくもないのです。一度、治療した部分は、急激に問題が起こらない限りは、動脈硬化が強く起こるということは比較的なりにくい傾向にあります。症状を起こした場所を治療しても、それ以外の箇所の動脈が発作を起こし、あまり間を置かないで再び狭心症や心筋梗塞になることもあります。心臓病を患った場合は、治療したからといって安心して「無罪放免」のような気分になるのではなく、病気が進みつつある血管に発作が出ないよう工夫することが非常に重要です。
ご家族に若くして心臓突然死で亡くなった方がいる、脳梗塞がある、足の血管が詰まっている、糖尿病である、頸動脈が50%以上詰まっているなどの因子をご自身がお持ちである、あるいはそのような親戚がいるという場合は、普通の人以上にコレステロールなど危険因子の対策をきちんとやらなければなりません。
狭心症の早期発見は胃がんなどを内視鏡で見つけるのとは違って、なかなか難しい面もあります。最近ではMDCTという優れた機能のCTもあり、より簡単に冠動脈を映し出すことができるようになりましたが、CTであることに変わりはなく全く被曝しないわけではありません。基本的に何も変わったことがないようであれば、検診をして、危険因子の多い人はそれを少なくするように努力することが大切です。不摂生の限りを尽くしておきながら、検診で「再検査」と出るのが嫌だから前日だけお酒やタバコを控えて、少しでもよい数値を出そうとする人がいますが、これは本末転倒です。全く検診の意味を誤解しています。検診の頻度は、特に症状や危険因子がない場合は、1年に1度程度でよいでしょう。悪いものがあれば、主治医とよく相談し、薬などを使用して治療をしていくか、食事で改善していくか、どれくらいの頻度で検診するか、次にどうするかというプランを立てます。
検診で一番困るのは、検診した施設や団体から全く説明を受けずに、そのまま紙を持ってきて「私はどうですか?何をやったらいいのでしょう」というパターンです。検診は往々にして、する側も受ける側も、検診をすること自体が目的になって、その結果をどのように活用するか、そもそも何のために病気やその因子を見つけようとするのかという本質的な部分を見落としがちです。ですから、検診を受ける際には、結果に対してその後のフォローまできちんとカバーし、病気があった場合はどのように対策するのか、というのをきちんと教えて、その後の生活指導もしてくれるところで受診する方が後々安心といえます。たとえば、会社にいらっしゃる産業医の先生やいつもかかっているかかりつけの医師のところで受けて、その結果について、まず彼らとよくディスカッションをすることが大事です。結果は最大限に生かさなければせっかく検診を受けた意味がありません。「要、再検査」となったならば、なぜそうなったのかを、まずは彼らに教えてもらう必要があります。説明も受けずに、「要、再検査」という文字ばかりに目が行き、再検査するときも、何を目的に来ているのかよく分からないという患者さんがとても多くいらっしゃいます。その前に、検診を受けたところでちゃんと説明をしてもらい、どのようにするという戦略を作ってもらった上で再検査をすることです。たとえば、再検査で心電図を取るといった場合も、心電図のどこに問題があるのかによって、その分野の専門性の高い施設や医師を紹介する必要があります。
検診は無料ではありません。個人が負担するにしても会社が負担するにしても、コストがかかっています。それなりの成果を患者さんに返さないと意味がありません。検診をする側も受ける側も、最大限に生かすつもりで臨みましょう。
■関連リンク:
ステント留置後の患者様へ|ハートケア情報委員会
http://www.heartinfo.jp/stents/
狭心症・心筋梗塞患者さんの体験談|ハートケア情報委員会
http://www.heartinfo.jp/taiken/
第20回 治療後の暮らしについて|ドクターズコラム|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/column/article/post_13.php

【プロフィール】
群馬大学医学部卒業。
群馬大学医学部付属病院第二内科、同大学院医学研究科、東京
女子医大心臓血圧研究所内科、立正佼成会付属佼成病院麻酔科、
榊原記念病院内科、米・スタンフォード大学病院循環器内科留学を
経て、1989年、医療法人社団平成クリニックを開設。
循環器疾患を専門に地域医療に従事。