ドクターズコラム

ハートケア情報委員会のドクターが狭心症・心筋梗塞の治療法など、狭心症・心筋梗塞に関するさまざまな情報をお伝えします。

第37回 心臓病は完治するのですか?

財団法人心臓血管研究所所長 相澤忠範

●糖尿病があると狭心症や心筋梗塞になりやすいと聞いたのですが、本当でしょうか?一度、心臓病になると薬をやめることはないのでしょうか?糖尿病も心臓病も診断がつくと完治するのは難しいのでしょうか。(60代男性)

財団法人心臓血管研究所所長 相澤忠範 まず、心臓病の中でも狭心症や心筋梗塞が完治するかということについてですが、これらは動脈硬化を基盤にして起こる病気であり、完治という言葉は適切ではありません。特に、心筋梗塞の場合は心臓の筋肉が壊死に陥っており、完治ということはありません。ちなみに心臓の筋肉が壊死すると、腕や足の筋肉と違って、鍛えると元に戻るなどということはありませんから、基本的に再生しないということになります。

 狭心症についてもバルーンやステントを使ったカテーテル治療をすると、比較的すぐに発作も消え、治ったかのように思われますが、それは完治したのではなく、発作のもとになるところを手当てしたに過ぎません。カテーテルは狭心症の症状が出た部分をとりあえず治療したのであり、基盤である動脈硬化を治したわけではありません。では、なぜ動脈硬化になるのかというと、ほとんどのケースにおいて生活習慣が災いして引き起こされています。ですので、カテーテル治療やバイパス手術をしてとりあえず発作のもととなる部分を治療した後は、根本的に生活習慣を改めて、再発を予防することが快適な生活を送る上で必要不可欠となります。

 その対策としては、これまでの生活習慣を洗い出し、狭心症や心筋梗塞の原因となった理由を明らかにします。血圧が高めで、糖尿病であったということであれば、それに対する食事療法と運動療法ということが基本になります。このような生活習慣の改善が何をさておき最初にくるものです。ただし、食事と運動だけで改善するのが理想的ではありますが、実際には、日常生活や社会生活を送る上で難しい面も出てきます。そこで、はじめて薬の助けを借りることになります。


 狭心症・心筋梗塞を患った人は、おそらく何らかの薬をずっと飲むことになります。最近の薬は非常に優れており、再発を予防する効果も高いものが多いです。また、薬を飲むことによる直接的効果に加えて、飲み続けることで病気に対する関心や注意を持ち続けられるという側面もありますね。薬は目的によって種類もたくさんあり、血圧をコントロールしたり、コレステロールが血管にたまるのを防いだり、糖尿病があれば血糖のコントロールをしっかり行う、というものもあります。また、一度、発作が起こった人の血管は、それ自体が傷ついているので、血の塊ができないようにアスピリンなどの血をさらさらにする抗血小板薬を使う必要があります。このようなことからも、基本的にはおそらくずっと何かしらの薬を続ける可能性が高く、狭心症や心筋梗塞が完治することがあるかというと、それは妥当ではありません。

 ただ、薬を飲む量が多くなるかどうかは、改めるべき生活習慣をどれくらいもっているかによります。高血圧・肥満・糖尿病などのリスクファクターをすべてもっていれば、それだけ薬も増えます。たとえば、運動不足、肥満である、糖尿病がある、血圧が高い、悪玉コレステロールが多い、ということになれば、当然その数だけ薬も増えるということです。逆に言うと、少なければそれだけ薬も飲まなくていいということになります。つまり、心筋梗塞や狭心症は、あくまで生活習慣の行きついた結果、ということなのです。発症するまでにどのような生活を送っていたかによって、術後の予防も、術後の生活も服薬もすべてが変わる、ということなのです。


 糖尿病が完治するかということについては、これは、生活習慣でかなり期待のできるものです。生活習慣が原因で起こる日本人に多いタイプの2型糖尿病は、耐糖尿異常が起こりやすいという人種的背景が日本人にはあるものの、運動と食事が適切であれば治ります。私の患者さんにも、みごとに正常化した人がいっぱいいます。ただし、糖尿病による血管障害が進み、腎機能が悪くなる、眼底も悪くなる、という状態になると難しいです。生活習慣による糖尿病対策は、初期での対応が非常に重要で、重症化する前にやらなくてはいけないのです。検診で糖尿病が判明したなど、初期であれば、薬も飲まずに、生活習慣の改善だけで良い状態になった人がたくさんいます。また、仮に飲んだとしても比較的少量で済みます。糖尿病の改善はなんといっても食事と運動。それにつきます。薬に頼るというのはあくまで2番目。まずは自分の食生活、運動を見直すというのが重要なのです。


■関連リンク:
ステント留置後の患者様へ|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/stents/
心臓病の治療|治療後のハートケア|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/cure/002.php
狭心症・心筋梗塞患者さんの体験談(第4話 食事・運動・ストレスの改善)|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/taiken/eps04.html

財団法人心臓血管研究所所長 相澤忠範
【プロフィール】
福島県立医科大学卒業。東京医科歯科大学医学部付属病院、平塚市民病院循環器内科を経て、1979年から(財)心臓血管研究所付属病院勤務。2005年より、同研究所所長。
大学卒業以後40年間、心臓カテーテル検査および治療に従事。虚血性心疾患における心臓カテーテル治療、冠動脈インターベンションに造詣が深い。

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