第35回 花粉症のこの季節 薬の飲み合わせで注意する点は?
東海大学医学部付属病院教授 伊苅 裕二
●心臓病の薬を飲んでいる場合、花粉症の薬と飲み合わせの悪いものはありますか?
花粉症の飲み薬で注意しなければならないのは、エフェドリンが含まれているものです。エフェドリンには飲み薬や点鼻薬などがありますが、咳止めや鼻炎薬などに用いられます。エフェドリンは、交感神経系を刺激するタイプですが、これは狭心症の薬とは反対の作用ですので、薬が効かなくなることがあります。狭心症の薬を飲んでいる人は、花粉症の薬を飲む前に主治医に相談する必要があります。
また、花粉症がひどくなると、ステロイドの筋肉注射を打つケースがあります。ステロイドはぜんそくなどにも使用され、花粉症においても非常に効き目が強く、一度打つとすぐに効いて2週間くらい症状が止まりますが、半面、副作用も大きく、高血圧や糖尿病を悪化させます。高血圧や糖尿病をもっている人、あるいは、現在治療をしているという人は、必ず主治医に相談してください。
●市販薬の飲み合わせについて確認する方法はありますか?
最近では大衆薬でいろいろなものが許可されるようになりました。これまで医師の処方のもとでしか処方されなかった薬がスイッチOTCとして、一般の人でも薬局で買うことができるようになっています。
薬の成分や飲み合わせ、副作用などについては、インターネットなどで公開されているものもありますが、一般の方が正しく判断するのは難しいケースもあるでしょう。
例えば、同じように「ダメ」といっていても、絶対に併用してはいけない、というケースと、注意しましょうというケースなどいろいろなレベルがあります。医師の場合、薬の効果とリスクを十分に理解したうえで、“注意しなければならない”というリスクが1あっても併用することによるベネフィットが100あれば、処方します。反対に、リスクとベネフィットが半々の場合は、患者さんの状態によって検討しますし、リスクがベネフィットを上回るようであれば、処方しません。その重みづけは、一般の方にはわからないでしょう。薬の飲み合わせについては、ご自分で判断せず、医師や薬剤師に必ず相談すべきです。効果がでないだけでなく、正しく飲まないことによって命の危険にさらされることもあります。
●花粉症も心臓病も、ストレスや疲れがたまったときに発症することがあると聞いたことがあるのですが、ストレスと心臓病の関係を教えてください。
ストレスと心臓病の関係は、簡単に言うと血管の壁へのストレスということになります。ここで、ストレスと心臓病の関係を整理してみましょう。まず、ストレスがかかると交感神経が緊張して脈拍が上がり、その結果、血圧が上がります。血圧が上がると、血管の壁は高い圧力でガンガンと衝撃を受けることになります。脈拍がゆったりであれば、壁はさほどの圧力を受けず物理的な衝撃はやわらかいのですが、ストレスで血圧が高くなった状態では、次から次へと強い力で壁は衝撃を受けている状態になります。この衝撃によって、血管に付着しているプラークが破裂します。プラークは数十ミクロンという非常に小さなものですが、破裂してしまうと血栓を作ります。これが心筋梗塞の発症原因になるのです。まさに心のストレスが血管のストレスになるといえますね。
「動脈硬化で硬くなって石みたいになっているんだったら、むしろそんなに簡単に破れないのでは?」との声が聞こえてきそうですが、プラークの破裂が起こる場合、プラークそのものが破裂する場合と、石灰化している部分とプラークのやわらかい部分の境目が破れることがあるのです。物理的に考えてみても、硬いところと柔らかいところの強度の違いの部分はもろいということをご想像いただけると思います。そして、やっかいなことに、プラークと石灰化はたいてい混在しているのです。
ストレスによる心臓病の発症については、性別や年齢はあまり関係ありません。ですから、どのような方も気をつける必要があります。
ストレス解消といっても難しいですが、医学的にもストレス解消によいと証明されているのが運動です。運動すると交感神経が一度上がりますが、運動を終えた直後に下がります。すると、脈拍も落ち着き、血圧も下がるのです。ストレスはじっと抱え込んでいるよりも、まさに言葉通り「発散」させた方がよいのです。話はそれますが、普段から運動習慣のある少し太った人と、運動習慣のない痩せた人とでは、運動習慣のある太った人の方が長生きであるという説もあります。話題のメタボリックの観点からもストレスの観点からも運動は心臓病の予防として効果的ですね。
■関連リンク:
第20回 治療後の暮らしについて|ドクターズコラム|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/column/article/post_13.php
ハートケア情報委員会PRESENTS|「ストレス」に関するアンケート結果発表
http://heartinfo.jp/enq0707/
【プロフィール】
名古屋大学医学部卒業。
東京大学医学部にて医学博士取得。
三井記念病院、ワシントン大学、再び三井記念病院勤務を経た後、
現在、東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)教授。
循環器内科学、心血管インターベンション、血管生物学を専門とし、
数々の論文を執筆。カテーテル等の医療機器の開発にも従事。