第21回 食生活が動脈硬化の進行を左右する 気をつけたい食事は?
埼玉県川越市 平成クリニック理事長 高山 泰雄
●動脈硬化を引き起こす原因となりやすいのはどのようなものですか?
動脈硬化を考えるときに最もその要因となりやすいのは、やはり食事です。その中でも特に動脈硬化を引き起こしやすいのは、脂肪です。脂肪にもいろいろと種類がありますが、その前に、動脈硬化のメカニズムから考えてみましょう。
動脈硬化は、LDLが酸化されることからはじまります。LDLとはリポ蛋白の一種で、肝臓で作られたコレステロールを体内のさまざまな組織に運ぶ役割を持ちます。血管の細胞に消費されず血中に残ってしまったLDLに運ばれるコレステロールがLDLコレステロール、いわゆる「悪玉コレステロール」です。一方、それぞれの組織であまったコレステロールを肝臓に送り返すリポ蛋白をHDLといい、HDLに運ばれるコレステロールをHDLコレステロール、「善玉コレステロール」といいます。コレステロールの高い食事をしつづけると、LDLが血液中で消費されなくなり血管壁に入り込んで動脈硬化が一歩進むということになります。LDLが血管壁に入ってくること自身がよくないのですが、これが酸化するとさらに悪いほうへと進みます。ですので、極力LDLを主体とした食べ物を少なくすることが大切です。飽和脂肪酸がLDLを最も上げると言われていますので、それを避けることがよいでしょう。脂質を摂る場合は、飽和脂肪酸よりも炭素の多い不飽和脂肪酸の方がよいとされています。オリーブ油、なたね油、魚油などがよいとされていますが、不飽和脂肪酸の中にも、多く摂りすぎると酸化LDLを増やすものもあります。よい機会ですので、一度ご自身で調べてみましょう。
●やはり、野菜を主に食べるのがよいのでしょうか?
ご存知のとおり、野菜の成分は主に繊維質です。おもしろいことにウサギをはじめとする哺乳類にはこの繊維質を分解できる動物もいますが、人間はできません。野菜が繊維として消化されずに残ると、腸の中に籠のようなものを作っていろんなものを絡みこんで、最終的には体の外に出すことができるのです。
私の患者さんにも、食事をする際に、最初に野菜をよく噛んで食べ、それからご飯や肉を食べてもらったところ、薬を使わずに食事の指導だけで、血糖値やコレステロールが改善した方もいらっしゃいます。また、別の患者さんは、少し糖尿病が疑われたため、野菜をたっぷり刻んで油を使わずに酢を中心とした調味料をかけて食べる、とする野菜のみの昼ご飯に切り替えたところ、同様に血糖値が下がり、コレステロールの値もよくなった方がいらっしゃいます。その他には、糖尿病でコレステロールの高い方が、豆を主体とした食事にしたところ、数値が改善したということもあります。心臓病からは少し離れますが、コレステロールの多い食事をして便秘が続くと、大腸がんになるリスクも高まります。
このような形で食生活を変えることは今までの生活を大きく変えることなく、すぐに始められるものでありますからやってみる価値はあります。また、野菜を先に食べると結構お腹いっぱいになるようですので、ご飯もあまり食べなくてすみ、肥満対策においても一石二鳥ですね。繊維が、お腹の中に溜まったコレステロールの運び屋にもなってくれるのでしょう。
また、食生活の話題になって思い浮かぶのは健康食ですが、健康食を買う際には、それが何に良いのかを理解して買う必要があります。健康というのは体の全体のバランスですので、一種類だけ健康食を摂ればすぐに健康になるというものではありません。自分に何が不足していて、そのためにどれを摂取すればいいのかをしっかりと吟味しましょう。
●心臓病はだんだん心配になってくる50代あたりから、気をつければ大丈夫ですか?
心臓病は多くの場合、生活習慣病の延長線にありますので、リスクが増える年頃になって、急に健康的な生活を始めたからといって防げるものではありません。むしろ、リスクが高まってくる50歳までに対策を実行する必要あるということです。一説によると、50歳くらいまでに心臓病のリスクとなる要因をすべてなくしてしまえば、それ以降はかなりの確率で平均寿命まで生きるといわれています。
最近の報告では、イギリス、アメリカではこの10年間で虚血性心疾患の発症率・死亡率がともに半分になったということです。みんな自分の健康管理に一生懸命で、予防医学の意識が高いことが、この結果に結びついたのだといえるでしょう。 また、冠動脈の動脈硬化は10歳頃には始まり、20歳以降では出来上がってしまう例がしばしば観察されること、さらに若年者の虚血性心疾患が増加してきたことなどから、今後、若年者に対する予防医学を積極的に実施することがいっそう大切になると思います。

【プロフィール】
群馬大学医学部卒業。
群馬大学医学部付属病院第二内科、同大学院医学研究科、東京
女子医大心臓血圧研究所内科、立正佼成会付属佼成病院麻酔科、
榊原記念病院内科、米・スタンフォード大学病院循環器内科留学を
経て、1989年、医療法人社団平成クリニックを開設。
循環器疾患を専門に地域医療に従事。