第18回 ストレス社会における心臓病
埼玉県川越市 平成クリニック理事長 高山 泰雄
●ストレス時代の到来とよく言われますが、ストレスが原因となる心臓の病気には、どのようなものがあるのでしょうか?
過度のストレスは様々な病気の原因となります。私たちの身体を支え続ける心臓にとってもストレスは大敵です。過度のストレスや緊張は血圧を上昇させるだけでなく、血管を収縮させ、詰まりやすくしてしまいます。その結果、虚血性心疾患などの心臓病を引き起こすきっかけとなってしまうのです。
新潟県中越沖地震の後には、被災者の中に「たこつぼ型心筋障害」を発症するケースが多く、激しい揺れによる精神的なショックや、余震に対する不安、長期にわたる非難所での生活によるストレスが原因となっているのでは、という報道もありました。
たこつぼ型心筋障害は、心臓から血液を送り出すときに、本来であれば、ぎゅっと縮むはずの左心室の下部が収縮しない病気で、収縮時の左心室の形状がたこつぼに似ていることから、このように呼ばれています。一般的な症状は、胸の痛みや圧迫感、息苦しさ、吐き気を伴います。狭心症や心筋梗塞などと症状は似ていますが、冠動脈に狭窄は見られません。たこつぼ型心筋障害と確定診断するには、心電図検査で波形や心臓カテーテル検査などをして左心室の状態を検査します。治療法としては、利尿薬や血管拡張剤などの薬物治療により、経過観察することが一般的です。通常、数日から数週間で正常化するといわれています。
たこつぼ型心筋障害とストレスとの因果関係は、明らかにされていませんが、肉体的なショックや精神的なストレスを受けた後に発症するケースが多いという報告があります。ストレスは様々な病気を誘引する危険因子の一つですので、くれぐれもためすぎることのないよう注意してください。
報告によると、脳と心臓の関係は密で、脳のある部分を刺激すると、心電図の変化や心筋の壊死が起こります。この時の心筋壊死の様子は、心筋梗塞の時の心筋壊死と異なっているそうです。いずれにしろ、ストレスが脳を介して心臓に大きな影響を与える可能性は大です。ストレスからイライラすると、その度に心筋に変化が起こっていると思うと恐ろしいことです。
●ストレスを受けやすい人、ストレスを受けやすい職業というのはあるのでしょうか?
一般的に、自分にも他人にも厳しい人、きっちりした人・・・などが、ストレスを受けやすいと言われていますが、様々な状況や要因によって、ストレスの度合いも感じ方も異なるので、こういう人がストレスを受けやすいとは一概には言えないでしょう。
現代は、忙しいといわれる企業の約10%の方がうつ状態、約15%の方が軽いうつ症状を抱えているといわれています。この職業だから必ずストレスを感じるというよりも、現代人は皆、ある程度のストレスを受けていると言えるでしょう。ただ、その中でも常に高い緊張状態に置かれていたり、集中力を持続させなければならないような職業に就いている方は注意が必要です。
ある研究によると、タクシー運転手は、長時間運転による疲労に加え、信号待ちや渋滞でイライラ感が募り、常に高い緊張状態にあるため、心臓突然死の発症率が高いといわれています。莫大な金額の取引を扱うトレーダーの方も強い緊張感の中で仕事をしているので同じことが言えるでしょう。
●高山先生はストレスを感じることはありますか?また、どのようにストレスを解消しているのでしょう?
私も仕事が立て込んだりすると、どうしてもストレスを溜めやすくなります。また、患者さんが注意した事を実行してくれなかったりすると、ついつい力が入って血圧が上がっているかもしれませんね(苦笑)。実際にストレスが多い時、しばしば、血圧が上がり、不整脈を感じる事もあります。
特にこれといった解消法はありませんが、スポーツをしたり、ゆっくりと読書をしたりすると、心が落ち着きますね。究極のストレス解消法は仕事をやめることかもしれませんが、患者さんが元気になる姿を見るのは嬉しいので、仕事はやめられません。
仕事をやめることが難しいように、ストレスの原因を完全に取り除くことは難しいかもしれませんが、皆さんもあまりストレスをためこまず、ご自分にあった解消方法を見つけて、うまく付き合っていくことが一番でしょう。

【プロフィール】
群馬大学医学部卒業。
群馬大学医学部付属病院第二内科、同大学院医学研究科、東京
女子医大心臓血圧研究所内科、立正佼成会付属佼成病院麻酔科、
榊原記念病院内科、米・スタンフォード大学病院循環器内科留学を
経て、1989年、医療法人社団平成クリニックを開設。
循環器疾患を専門に地域医療に従事。