ドクターズコラム

ハートケア情報委員会のドクターが狭心症・心筋梗塞の治療法など、狭心症・心筋梗塞に関するさまざまな情報をお伝えします。

第17回 狭心症の治療について

東海大学医学部付属病院教授 伊苅 裕二

●狭心症の治療にはいくつか種類があるようですが、どのようなものか具体的に教えていただけますか?また、治療方法は選べるのでしょうか?成功率も気になります。

東海大学医学部付属病院教授 伊苅 裕二 治療の方法は大きく分けて3つあります。このうち、血管が詰まっていて狭くなっている部分の血流を改善する方法は2通りになります。1つは体の別の部分からもってきた血管で迂回路をつくるバイパス手術。もう一つは詰まった部分の血管を広げるカテーテル治療です。内科的治療方法である薬物治療は、詰まっている血管を拡張させる治療方法ではありません。ただし、心臓全体の調子をよくしたり、少しでも血流がスムーズになるようにしたり、詰まることを予防することによって心筋梗塞を予防する治療方法です。この方法は、狭心症の初期の段階では効果的ですが、病状が進行するとカテーテル治療やバイパス手術が必要となります。
 多くの狭心症において、カテーテル治療とバイパス手術を選ぶことが可能です。どちらの治療を受けるかは、担当の医師とよく相談しましょう。すすめられた治療方法に疑問があったり、違う方法で治療を受けたいと思ったりするものの、なかなか相談しにくい場合は、セカンドオピニオンとして、他の医師に相談することもできます。いずれにしても、大事なからだですので、納得がいってから治療に臨みましょう。
 治療の成功率については、病変の難しさや術者の経験によって大きく異なります。通常、カテーテル治療の成功率は98~99%と言われていますが、血管が完全に詰まってしまう慢性完全閉塞を起こしている場合、カテーテルを挿入することが難しくなり、カテーテル治療の成功率は下がり、70~80%程度になります。治療が原因となる死亡率は、カテーテル治療の場合で1%未満、パイパス手術では1~2%未満です。いずれの場合も、狭心症の早い段階で治療を受ければ、かなりの確率で生還できるだけでなく、術後もそれまでと同じような日常生活を送ることができる可能性が高まります。

●費用が気になります。カテーテル治療とバイパス手術とそれぞれどれくらいかかりますか?また入院期間は何日くらいになるのでしょうか。

 実際の治療の中身によって変わってきますが、保険を使わずに全部自己負担だと仮定した場合は、カテーテル治療が約200万円、バイパス手術が400万円くらいです。ただし、現状、日本は医療制度が恵まれているので、実際は3割の自己負担となります。さらに、年末調整などで戻ってきますので、最終的な自己負担額は5~6万円程度となる場合が多いようです。
 入院期間は、カテーテル治療であれば3~4日、バイパス手術の場合1~2週間が一般的でしょう。ただし、いずれも治療や手術の難しさやご本人の回復状況によって若干前後します。

●カテーテル治療とバイパス手術の再発率を教えてください。

 各治療後の再発率の説明をする前に、まず留意しなければならないのがもう一度治療を受けることの危険度です。バイパス手術の場合、1回目の治療に伴う死亡率は先ほどお話したとおり1~2%ですが、2回目の死亡率は10%と大幅に上がります。カテーテル治療は、2回以上であっても死亡率は1%以下を維持します。つまり、再治療を受けることによるメリットが同等ではないということです。
 それでは、再発率はどれくらいかというと、カテーテルの場合は、薬を塗布していない金属ステントだと20~30%ですが、薬剤溶出ステントを使用すると10%以下に抑えることができると言われています。バイパスの場合は迂回路として使用する血管によって再発率が大きく異なります。心臓の上部にある内胸動脈を使用した場合、10年間詰まらずに開存する確立は90%です。しかし、足の静脈を使用した場合は、10年間で40%しか開存しないという報告があります。使用する血管で再発率が大きく変わりますので、手術を受ける前に十分な説明をうけましょう。

東海大学医学部付属病院教授 伊苅 裕二
【プロフィール】
名古屋大学医学部卒業。
東京大学医学部にて医学博士取得。
三井記念病院、ワシントン大学、再び三井記念病院勤務を経た後、
現在、東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)教授。
循環器内科学、心血管インターベンション、血管生物学を専門とし、
数々の論文を執筆。カテーテル等の医療機器の開発にも従事。

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