ドクターズコラム

ハートケア情報委員会のドクターが狭心症・心筋梗塞の予防法や治療法など、狭心症・心筋梗塞に関するさまざまな情報をお伝えします。

第58回 心臓病と年齢の関係は?

財団法人心臓血管研究所名誉所長 相澤忠範

●たまに、心臓がきゅっとなったり、チクチクしたりするのですが、心臓病の可能性はありますか?まだ30代なので、あまり重要だと考えていないのですが…

財団法人心臓血管研究所名誉所長 相澤忠範 “心臓がきゅっとなる”とのことですが、これはどういうときにきゅっとなるのかが大事です。例えば、階段を急いでのぼっているとき、朝の通勤で慌てて職場に向かっているときなど、何かしら、体に負担をかけたときにきゅっとなる症状が出るようでしたら、狭心症や心筋梗塞など心臓病のリスクが考えられます。これは30代であっても、男性であれば可能性は必ずしも否定できません。こういう症状があれば、きちんとした検査をする必要があります。30年前までは、30代の人が心臓病で病院に運ばれて来ることはほとんどなく、私たち医師も非常に驚いた記憶がありますが、今はさほど珍しくなくなりました。女性の場合、家族性脂質異常症など、遺伝的な疾患を持っているなどといった特殊なケースを除いては、30代で狭心症や心筋梗塞などの心臓病は、基本的にまず考えなくて大丈夫です。

 もう一つの“チクチクする”痛みというのは、一般的に心臓病である可能性が極めて少ない自覚症状です。ただし、患者さんがある症状を感じたとき、それをどのように表現するかは、一人ひとりでかなり違いがあります。ですので、専門家に相談することなしに、痛み方だけで判断することは難しいですので、ある特定の無理を体にかけたときに痛みが起こるということであれば、一度検査することをおすすめいたします。


●狭心症・心筋梗塞の発症の仕方で、若年層と高齢者とで特徴の差はありますか?

 若年層と高齢者とで、心臓病の起こり方に特徴の差はありません。いずれも生活習慣が原因となって起こります。特に、30代などの若年層で狭心症や心筋梗塞になる場合、その原因はまさしく生活習慣そのもので、ストレスや不規則な生活などいろんな原因がありますが、その中でも食生活の問題が大きく関与しています。高齢者の場合は、長年の生活習慣に加えて、年齢に伴う動脈硬化があります。いずれにしても、狭心症・心筋梗塞といった虚血性の心臓病は動脈硬化によって引き起こされるものです。若くしてこれになってしまう人は、動脈硬化を速める生活をしているということになります。従って、根本的な原因は同じですから、発症の仕方にあまり差はありません。


●若い方が早く治る、きれいに治るなど、治りは良いのですか?

 治りの良し悪しは、必ずしも一概には言えません。若い人の場合、家族性脂質異常症などの病気でなければ、ほとんどの場合、狭心症・心筋梗塞といった心臓病の引き金となるのは食生活をはじめとする生活習慣病の要素が強いです。ですから、その危険因子を取り除けば、再発する可能性は低くなります。ご高齢の方の場合、全身の動脈硬化の関係がありますが、それもその進行度によります。比較的きちんとした生活習慣を営んできた人であれば、動脈硬化の程度も軽く、治療後にさらに生活に気をつければ、再発を防ぐことができる可能性はかなり高まります。ですから、若い人の方がきれいに治る、早く治るとはいえません。逆に、他の病気のように、若い方が細胞のはたらきが活発なので進行しやすい、ということもありません。

 心臓病は、なんといっても、かからないよう日頃から予防することが第一です。しかし、万が一かかってしまった場合は、カテーテル治療であってもバイパス治療であっても、再発予防が大切になります。それは、その人の病気の危険因子をいかに取り除くかということにかかっています。治療で治したといっても、実際は一時期の手当てをしただけです。血管が詰まったり狭くなったりしたところを、部分的に再開通させてあげたに過ぎません。根本的に治すということを意識するならば、再発防止が一番重要です。もし、30代で狭心症や心筋梗塞になってしまったら、なぜ若いうちにそんな病気になったのかの理由を見つけ、それを改善していかなければ、再発はしやすいということになります。


■関連リンク:
虚血性心疾患について|心臓病について|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/disease_h/001.php
第7回 予防で一番大切な要素は食事、そして運動。|ドクターズコラム|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/column/article/post.php
第34回 睡眠・食事、特に若い心臓病患者さんの特徴とは?|ドクターズコラム|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/column/article/post_27.php

財団法人心臓血管研究所名誉所長 相澤忠範
【プロフィール】
福島県立医科大学卒業。東京医科歯科大学医学部付属病院、平塚市民病院循環器内科を経て、1979年から(財)心臓血管研究所付属病院勤務。2005年より、同研究所所長。2011年7月より同研究所名誉所長。
大学卒業以後40年間、心臓カテーテル検査および治療に従事。虚血性心疾患における心臓カテーテル治療、冠動脈インターベンションに造詣が深い。